3月21日の公明新聞『主張』に掲載された記事になります。
ロシアの軍事侵攻
正当性なしと国際司法裁が判断
ロシアは、ウクライナへの軍事侵攻を集団的自衛権の発動であると主張している。
ウクライナ東部のドネツクとルガンスクの両州には、親ロシア派武装勢力の活動が活発な地域があり、ロシアはそこを「独立国」として承認。ウクライナによる両州の住民の「集団殺害」を止めるため、ロシアは独立国と集団的自衛権を発動したという。
国連憲章は武力の行使や威嚇を禁じている。ただ、個別的・集団的自衛権の発動による武力の行使と、国連安全保障理事会が国際の平和を揺るがす脅威を認定し、それへの対処を各国に求めるため採択した決議に基づく軍事的措置は例外となっている。
だが、侵攻は国際法上も合法であると装うため、集団的自衛権だと説明しているロシアの主張はもう通用しない。
国際司法裁判所(ICJ)は16日、ウクライナによる集団殺害の事実はなく、ロシアの軍事侵攻には根拠がないと指摘。あらゆる軍事行動の即時停止をロシアに命じる暫定措置命令を出した。
ICJの暫定装置命令には法的拘束力がある。日本政府もこの点を強調し、ロシアにICJの命令に従うよう訴えた。ロシアは紛争当事国の合意がないという理由で命令を拒否したが、合意がなくとも従わなければならないのが暫定措置命令だ。
2日の国連総会緊急特別会合で、日本を含む141カ国の賛成で採択された決議でも、ロシアの侵攻は違法な「侵略」であると非難した。しかし、決議に反対した国や投票を棄権した国の中には、ロシアの主張には一理あると考える国も少なくなかった。
全ての国連加盟国が参加する唯一の“世界法廷”のICJが判断を示した以上、ロシアの主張に法的正当性はない。ウクライナの激戦地にも職員を派遣し、調査している国連人権高等弁務官事務所が、ロシアの攻撃で多くの民間人が犠牲になっている事実を第三者の立場からICJに報告したことも重要だ。
国連憲章に違反する国は、加盟国から除名されると同憲章で規定されている。ロシアの軍事行動は、国連加盟国の資格を失ってもおかしくないほどの重大な違法行為であることを強調したい。
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